かものはし日記11月号


11月1日

数日前
ある人に
宇宙との一体感とか、そういうのを感じたことがある?
と聞かれ
全然!
と答えたことを思い出しました
ジェームス・ラブロック博士がガイア仮説で唱えた
「地球は一つの生命体である」という概念は
初めて聞いたときにとても新鮮な気持ちはしたけれど
正直言って実感はさほどなかったのです
ちょっと大きすぎるような
客観的すぎるような
そんな気がしました
無神経な僕には
地球が生命体だと意識できるほどの感受性など持ち合わせていないのです
もうちょっと個人的に一体感を意識できる言葉はないかな、と
ぼーっと考えていたら
「外臓」という言葉が浮かんできました
人が健康を考えるとき
基本的には内臓のような自分の内側のことを考えます
でも
外界が健全でなければいくら自分だけが健康に気を使っても
しょうがないわけです
そのときに自然というものを自分の外側の臓器であると考えれば
僕的には自然との一体感がよりリアルに感じられるような気がしてくるのです
「自然は自分の外側の臓器、外臓である」
人それぞれ
なにか自分と自然との関係性を表現できる言葉を
探してみるといいんじゃないでしょうか
魂の乗った生きのいい新しい言葉で

11月2日

本屋でウミウシの図鑑をみつける
約300種類のウミウシは
どれもシュールで無意味に美しい
何でこんな形でこんな色なんだろ
ちょっと欲しかったけれど高いのであきらめる

昨日録画したカワウソのビデオ(生き物地球紀行)を観ながら
夕食
番組の出来としてはいまいちだが
やはりかわうそは素敵だ
地球との戯れ具合がすごくいい
大地に体をこすりつけて愛撫しているよう

11月3日

ご飯を炊こうとしたら
米が足りなくて
後藤のうちに少しもらいに行く
子供の頃、僕は
夕食時に家のお醤油とかお米とかが切れたりすると
母親の使いでご近所に借りに行ったものでした
「すいませーん、お醤油少し貸して下さーい。」
とかね
昔はコンビニとかないからさ

11月4日

母親と恵比寿で昼食
ビルの谷間に神社を見つける
えびす神社
こんなところでも神様はいてくれるのね

11月5日

タイトルイラストを変更
ちょっと毛色の変わった絵を描いてみました
俳句はいつものように如月美樹さん
野良天使猫
(退化しかけた第三の目がついてます)
僕の住んでいる町は
散歩の時
適当に歩いていても
(決まった散歩コースではなくても)
確実に撫でられる猫が3匹はいるいいところです

スピリチュアル・ファッションの表紙も変えました
観てね

11月6日

夕方
とある女の子の幸せを願いながら空を見上げる
鳳凰の尻尾のような雲
透明で美しい螺旋模様
自然界の運動は基本的に螺旋運動なのだそうだ
そこに
空を二つに分ける無粋な飛行機雲
直線は人の生み出したもの
直線は世界をわかりやすく単純化する
世界を原因と結果に分ける
でも
世界は複雑な螺旋模様なのだ
まっすぐ歩まず
世界に逆らわず
螺旋のように生きたい
ぐるぐると軽やかに悩みながら

11月7日

後藤がシャンパンとケーキを持って遊びに来る
昼間に飲むお酒はなかなかきつい
夕方まで寝込んでしまい
起きても頭が痛くて仕事にならず

宇宙船地球号を観る
都市を緑化しようとする建築家の話だ
ビルの壁面にツタをはわせ
屋上には空中庭園
それだけで明治神宮の森の100倍の緑が確保でき
夏の平均気温を4度も下げることができる
空気の浄化もできる
来世紀
都市はゆるやかに森に帰っていく
素敵だよ
森の中を歩くように
渋谷で買い物ができたりして
ビルの緑化を義務化するような法律をつくればいいのに

11月8日

なんかぱっとしないので
表紙を変えました
こっちの方が
俳句にあっているような・・
野性的な女の子がテーマです
女の子の右目が猫目です
スピリチュアル・ファッション
ワイルド・フェイス版
というコーナーを近いうちに立ち上げようと思ってます

そういえば
昨日はインディ・ジョーンズをテレビで観たのだが
あーゆう映画は
何の疑いもなく観られるのでほんとに心地よい
完全な二元論なので
悩まずに済むからだ
20世紀のエンターティメントの基本は
「悩まない」だった
でも
来世紀はそうはいかない
二元論の時代は終わったのだ
来世紀のエンターテーメントは
「悩む」だ
軽やかにおもしろくエキサイティングに悩む
そんなエンターティメント映画を望む

今日は立冬らしい
やけに暖かいけど
いつになったら寒くなるのやら
冬は好きです
暖かい部屋の中から
寒い外へ一歩踏み出す瞬間が好きです
そしてどんどん歩く
だんだんと
体が冬を受け入れる
白い息をゴジラのように吐く
そんな瞬間がもっと好き
ちなみに
俺が思うに
ゴジラはカワウソをベースにデザインされた怪獣です
たぶんね(笑)

11月9日

今日も暑いので
布団などを干してみる

太陽がたくさん詰まった布団にくるまれて眠る

11月10日

階下の中国人が
友人を呼んで夕方辺りから大声で騒いでいて
とてもうるさい
彼らにしてみれば気を使って小声で話しているのかもしれんが
基本的な声量が日本人よりでかい
あんまりうるさいので
キングクリムゾンをフルボリュームでかけて対抗したが
効果がないので
スピーカを床に向けてさらに指向性を階下に絞った
が、だめ
楽しくお話をしておる
あきらめてステレオのスイッチを切る
とゆうか
これでは僕が近所迷惑になってしまう(笑)
そーこうしているうちに
11時頃何事もなかったように全員が部屋を去っていった
うーむ
大陸のおおらかさ(悪く言えば無神経)には勝てん
敗北

11月12日

「俺のおかげと俺のせいじゃない」
という小説を読む
世界に起こった素敵なことはみんな俺のおかげで
世の中の悪いことは全部俺とはなんの関係ない、俺のせいじゃないと
豪語する主人公が
片目をつぶれた猫を拾う
その猫が突然しゃべりだし
私の目が見えなくなった原因はあんたにある
と言われる
身に覚えはないし
難癖つけられてはたまらんと思った主人公は
その猫(フェイ)とともに
目がつぶれた原因を探る旅に出る
という
何となくスピリチュアルなロード小説
なかなか秀作。
そういえば
学生時代
宴会の時
友人が僕のものまねをやるというので観ていたら
「おれのせいじゃねえよ」
と言いながらたっぷりと大げさな表情をつけていたのを思い出した
そうそう
昔、口癖だった
「おれのせいじゃねえよ」
素敵な響きだ(笑)

11月17日

買ったけれどまだ読んでもいない本を
古本屋で見つけて
半額くらいで売られていると
とても悲しくなってしまう
今日は2冊もあった

最近
後藤は夜の9時には寝るらしい(朝の4時おき)
今日中にアップしなければいけない完成原稿のチェックのため
10時頃電話をしたら
ほんとに寝てた(笑)
おい

この世で
お尻を拭くときに
一度もうんこが手に付かないで
一生を終えた人がいただろうか?
もしいたとしたら
その人は完璧な人間であろう
ということを
とある人と話し合ったのでした
(下品ですまん)

11月18日

カワウソ好きが高じて
ニホンカワウソ友の会
のホームページにリンクを張らせてもらいました
カワウソとそれを取り巻く自然
生きとし生けるものを愛している人たちのページです
是非
おいらは会員になるのさー
るんるん

11月19日

とある人に
加藤さんの言動はほとんど冗談ばかりだと言われる
たしかにその通り(笑)なのだが
1割位はまじめな話もするんだよ
それに
人生の9割をくだらないことを言って
毎日笑って過ごすのは
僕にとってはすごく重要で神聖(笑)な行為なのだ

11月22日

喜びや幸せや楽しみは
重箱の隅をつつくように
見つけたい(笑)

11月23日

4年ぶりに新作ゴーストドックを完成させた
ジム・ジャームッシュのインタビューを読む
作品を作るたびに
自分の作品から何かを学んでいる
と語っておられました
自分の作品から何かを学ぶ
当たり前なことだけれど
忘れがち

11月24日

今日は
あんまりよくない日であった
犬にかまれて
出血
道ばたに捨ててあった段ボールに手をかすって
出血
家に帰ったら
ダイレクトメールが来ていて
なんと六本木のWAVEが閉店になるらしく
閉店セールのお知らせだった
がーん
おいらはこれからマニアックで個性的なCDを買うとき
どこで買えばいいのだろう

六本木のWAVEは
新宿のディスクユニオンもそうだけれど
僕の聖地です(いや、ほんと)
六本木のWAVEのCDの品揃えのおかげで
僕はずいぶん救われました
アルゴ・ペルトの静謐な音楽を聴けたのも
イヴァ・ビトバのエネルギッシュな歌声とバイオリンの音色を聞けたのも
サラフィナを聞いてアフリカのリズムに目覚めたのも
フィリップグラスの反復音楽を知ったのも
サインホを聞いてモンゴルのホーミーを知ったのも
退廃的だった若い頃、SPKなどの陰気なノイズミュージックに浸れたのも
敬愛するギタリストのフレッドフリス主演のドキュメンタリー風映画
ステップ・アクロス・ザ・ボーダーを観て感動できたのも
(シネ・ヴィヴァン六本木)
・・・
みんなみんな六本木WAVEのおかげです
きりがないほどお世話になった六本木WAVE
スタッフの皆さん
ほんとにほんとにどうもありがとう

11月25日

ここに引っ越してきて
3度目の
警察官の来訪
といっても犯罪を犯したわけではなく
居住者カードを見ながらの確認のようなもの
やはり僕のように
一日中、部屋にいたり
さらに
坊主刈りに近い髪型で
ぱっと見、ちんぴらのような風貌だと付近の住民も不安なのだろうか
だって
後藤のところには一度も来ていないもの
警察官の方に信用を得ようと
いつものように画集を引っぱり出してきて
見せまくるのだが
僕らの本を見ているうちに
大友克洋の話がでてきたりして
なかなか飲み込みが早くて助かりました
(いつもは職種を説明するのが大変)
たぶん30才くらいの方
玄関の横に何気なく置いてあったコルトレーンのCDを見つけて
ジャズですかあ、渋いなあ
最近はダンス音楽ばかりで
今の若い奴に聞かせてやりたいとか何とか言って
敬礼して去っていきました
はつらつとした素敵な警察官の方でした
最近、警察官の素行が問題になっているけれど
夜中に
コンビニにビールを買いに行けるくらい安全なのは
彼ら警察官のおかげなのです
安全に慣れっこになっていて
少し彼らに対する感謝の気持ちが足りないのでは。
一般市民が
死と隣り合わせの仕事をしている彼らのメンタリティを
気遣ってあげられない、というのも
今の警察内部が腐敗してしまった一要因かも
ごくろうさまです、くらいは言いたいよね

11月26日

女の敵は女
というフレーズには
一般的に
いろいろな意味があるとは思うのだけれど
僕が密かに勝手に思うには
男は女の敵にはなり得ない
ということ
女が敵として戦うには
男という生き物はあまりにリアリティが無さすぎる
感情という野生の生き物を戦友として共に戦っている女性と
感情という野生の生き物を理性という檻の中に入れて
ペットのように飼い慣らし
共に戦うことを放棄した男性とでは勝負にならないのだ
理性というのは幻想だから・・
本当の武器にはならない。
ということで
理性という幻想兵器を9割ほど武装解除したい僕
(おれって、理屈っぽいからさ)

たいていの人は
自分は特別な存在であると思いたいもの
かく言うぼくも
そうでも思わないと怖くて真っ白い紙と対峙できないのです
でも
実はすべての人はみんなみんな特別な存在なわけです
だって
過去にも未来にもましてや現在にも
二人として同じ人間は存在しないのですから
だから
もっともっと
自分が特別な存在だということを自覚して
そして
それに感謝して(ここが大事)
さわやかに傲慢で愛情あふれるいやな奴が
いっぱいいっぱい増えるといいなって
思うのです(笑)

11月27日

愛されたいという気持ちは
本能だけれど
愛したいという気持ちは
学習だよね
世界中のあらゆる書物は
他者を愛するための教科書に他ならない
こんなにたくさん教科書があっても
人はなかなか人を、世界を、愛せない
でも
こんなにたくさんの愛するための書物があるのだから
やっぱり人は誰かを愛したいのだ
とすると
愛したいという気持ちも本能だ
ならば後は簡単
愛は技術論のみで語れるはず
愛したいという前提があるのならば
その感情をスムーズに流すことのできるシステムがあればいい
誰かをコントロールしようとしたり
縛ったりするためのシステムではなく
(それはただの過剰な自己愛)
愛するためのシステム。
愛のテクノロジーは
素直ですごくシンプルなはずだ
あまりにシンプルすぎて
たぶんだれも思いついていないのでしょう
(誰か思いついてよ)
そしてあまりにシンプルなために
複雑に変化する自然の中で
ダイナミックに対応していくことでしょう

11月28日

突然ですが
加藤は結婚しました
今日は親戚のみのパーティでした
これで
加藤と後藤がホモではないかという
疑惑もなくなるとうれしいです(笑)
まあ
バイ・セクシュアルとか偽装結婚だと言われてしまえば
そうじゃないと証明できるものはなにもありませんが(笑)
(どうやって証明すればいいのだ)
とりあえず、いろんな奴に冗談混じりに言われ続けて
少なからず心を痛めていたわけですが
その呪縛からようやく解放されたわけです
ほっとしました
ということで
今後ともよろしくお願いいたします

11月29日

洗濯をする

洗濯機の中に洗濯石鹸を入れずにスイッチを入れてしまったのを
洗濯が終わったときに気付いて
もう一度やり直す
ああ、しまった、洗濯物の生地が痛んでしまう、と心を痛める
というのも
あなたが洗濯をすると
洗濯物の痛みが激しい、と数日前妻に言われ
考えてみれば
僕には
洗濯すると生地が傷むという概念すらなかったのだ
熱力学の第2法則から考察すれば
物が痛んでいくのは当たり前の話であって
そんなこと仕方がないじゃないかと思うのだが
ようするに
痛む速度を遅くできるのだから
たとえばネットの中に洗濯物をたたんで入れるとか
そういうことで
服というのは長くきれいに着られる、と彼女は言いたいのだ

それはごもっともな説なので
心が痛んでいるというわけです

11月30日

いきなり所帯臭いな、上の日記
いままでのようにハードボイルドに書かなくては(笑)

いつも行く惣菜屋さんで
夕食のおかずを物色していたら
おかずと値札が違っているのに気が付いて
(さすが常連)
惣菜屋のおばちゃんに間違いを指摘したら
この街の人たちはみんないい人だねえ
地震が起きたときは助け合おうねえ
困った時はうちに来てね
と言われる
今日は仕事がうまくいかずにいらいらしていた矢先
おばちゃんに温かい気持ちを頂いて
とても救われた気分だった。
ありがとうおばちゃん
おばちゃん、でも俺はそんなにいい人じゃないんだぜ


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