カモノハシの肩こり
1998年1月号


1月3日

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします。

やっと実家より帰還
やれやれ
ほんとはもっと早く帰ってくるつもりが
親父が「もう帰るのか。」と寂しそうな顔をするので
ついつい帰りそびれてしまった。

実家には今年で推定19歳になる
グリちゃんという猫がいて
久々に猫を抱きかかえられて幸せ
(最初はちょっと警戒していたけれど、すぐに膝に乗ってきてくれて嬉しい。)
さすがに歳で
高い声が出なくて
ぐーぐーうなっている。
寝場所がないので居間に寝ていた僕を
夜中に外に出してくれと3度ほど起こす。
ちょっとゴジラみたいな目つきをする猫だがとてもかわいい。

1月4日

年末から三日まで家族で温泉旅行をしてきた後藤と
親孝行について話し合う。
母親とのつきあいはとてもむずかしい
というところで意見が一致
人間関係の距離が近すぎるのでお互い遠慮がない。
(さらにあいては息子を自分の一部だとさえ思っているきらいがある・・)
もっと優しい言葉をかけてあげたいのだが
なかなかどうして恥ずかしいし、妙に腹も立つしで
ついついぶっきらぼうな物言いになってしまう。

母親と子供(主に息子)の距離の取り方が
そのまま子供が大人になったときの他人との距離の取り方になるらしい。
母と子がべったりの場合は
大人になると他人に対して同じようにべったりとした関係を求める。
母親の支配力というのはすさまじい
正月の間、ずっと家族を観察していたら
(いやな息子でしょ)
人間関係の距離の取り方から
思考方法から
自分の内面の隠し方から
なにからなにまで
冗談を言うときの芸風まで
母親とそっくりなのにびっくりする。
意識して教わったことなどないのに・・
子供は母親の意識の表層ではなく
母親の無意識を感知して育っていくということを以前本で読んだけれど
当たってるなー。
(父親というものの精神的影響って実はあまりないみたい。子育てに父親なんていらないという説もある。父親は母親より他人なので、上手に優しくできるし気を使うのも比較的自然にできるんだよな。)

1月5日

たくさん年賀メールありがとうございます
必ずお返事します。

今日宝くじ売場の前を通ったとき
くじを買おうと列に並んでいる人たちを観て
だれかが以前こんなことを言っているのを思い出した。
「宝くじに当たる人は前世でたくさんの人たちを助けた人なのよ。
だから宝くじに当たる人は最初から決まったいるの。」
その説が正しいとすれば
宝くじに当たらなかったほとんどの人は過去生で
宝くじに当たった人にお世話になった人たちなのだ。
実は彼らは宝くじを当ててやろうという意識の裏に(無意識に)
前世でお世話になった人への感謝を込めて
数千円のおれいをしているんだと・・
うーん、我ながらいい説だな(笑)

1月6日

あにきは母親の挑発を冗談で返すから
うまいんだよなー、おれはすぐ黙っちゃうから
よけい母親の逆鱗に触れてしまう。
と、弟に言われる。
何通か母親に関するメールをいただきましたが
みんな大変みたいです。
あらゆる精神攻撃はすべてギャグで切り返す!
うまいギャグは物事の核心をついてしまうので
相手は笑いながらなにもいえなくなってしまう。
これが過剰な母性に対抗する唯一の方法なのかもしれない
この方法は自分に向けても使えます。
落ち込んだとき
その自己憐憫を思いっきりギャグにして笑ってしまう。
「あーまたおちこんでるぜ、わっはっは。」てな感じ。
これで何とかその場はしのげるし、
笑いながらも意識は落ち込みの原因となる核心部分へ向かうための
エネルギーを蓄えているのです。

1月7日

ソフトウェアシンセサイザー
ReBirth
を買う。
もう生産中止のローランドのアナログシンセTB303(テクノサウンドミュージシャン必携)とリズムマシーンTR808をソフトウェア的に再現したという優れもの。
プレステのDEPTH のように
リアルタイムで音を聞きながら打ち込みできるのでとても使いやすいです。
これで僕もテクノミュージシャン!って
そんなにテクノは大好きというわけではないので
うまくジャズっぽくできればと思っています。

生物学者の多田富雄さんの免疫学の講座がNHK教育で始まりました。
免疫の意味論
自己とは、非自己とは?という興味深いテーマでとてもおもしろいのですけれど
人工的に鶏にウズラの翼をくっつけたキメラを観ると
動物の味方の僕としては、ちょっと複雑な気分になります。
ほんとに重要な研究なんですけれどね。

そうだ
5年間故障して、うんともすんとも言わなくなったDATが
突然直ってしまって大喜び
5年前多摩川土手で後藤とやったサックスと三味線のインプロヴィゼーション
の録音の模様が生々しくよみがえってきました。
いい音だしているんだよ、俺のサックスは!
(なんて切実な音だ!阿部薫みたいだ。うそ)
めちゃくちゃ吹いているんだけれどね。

1月8日

雪、雪、雪、わーい雪だ!
東京は二年ぶりの大雪
夜中に音楽家の葛生さんたちと多摩川の土手に行く。
一面の銀世界
葛生さんが人間雪だるまになっておおはしゃぎ!

葛生さんの旦那さんは流体の専門家だ。
雪の中で
コンピュータによる流体のシュミレーションの話を伺う。
そのうちもっとゆっくりお話を聞きたい。
ちなみに「流れのメタフィジックス」という
スーパーコンピューターを使った流体のCGのレーザーディスクを
僕は持っているのだけれど
それを作った人は葛生さんの旦那さんの師匠だそうだ。

坂道で立ち往生しているトラックをみんなで押してあげる。
そのうちたくさん人が集まってきて
10人ぐらいの人たちで一生懸命押すが
結局動かず。
うーん、でもいい人たちが多くて嬉しい。

1月9日

前日はしゃいだので
体の節々が痛い。
一夜あけると
踏み荒らされて茶色くなった雪が無惨に散らばっていて
前日の銀世界が嘘のよう。
でも、歩いているとあちこちに雪だるまがあって楽しい。
小さいのからでかいのまで
道路工事の時に使う三角錐のしきりを帽子にしたやつもいた。
東京でいくつの雪だるまが作られたのか
そういう統計をニュースで観たいよな。(無理か・・)

1月10日

友人の引っ越しを手伝いにいく途中
バス停で本を読んでいたら
上から溶けた雪の固まりが落ちてきて本を直撃
とほほ、買ったばかりの本なのに。
ちなみに本のタイトルは
「小説の技巧」ディヴィッド・ロッジ
柴田元幸さんの翻訳
僕は柴田さんの翻訳本はとりあえず何でも買う。
とにかく彼の日本語は美しい

あいてててて
重いものを持ったので腰痛になってしまった。

1月11日

柴田さんのような英語の先生がいたら
もっと英語が好きになったのに・・
ちなみに、受験生時代
SF翻訳家の矢野徹さんの確か「SFの翻訳」という本で
英語に目覚めて
デューン 砂の惑星の第一巻を
矢野さんの対訳と照らし合わせながら勉強した覚えがあります。
ベネ・ゲセリットとかハルコンネンとか
ギルドナヴィゲータとか
試験に絶対でない単語ばっかり覚えてました。

1月12日

またしても東京は雪
でもほとんど積もらず雨に変わってしまった。

友人が
パワーPC604e/180を二つ搭載した
いわゆるデュアルプロセッサーカードをくれたので
いま現在うちのマックに載っている604/120のプロセッサーカードと交換してみる。
単純計算でほぼ1.5倍早くなる。
うーん何となく早くなった気が・・
でもフォトショップ4.0はデュアルプロセッサー対応なので
処理速度が確実に速くなった。
でも、筐体をあけてびっくり
中は埃だらけで
思わず掃除をしてしまいました。
年に一回はふたを開けてちゃんと掃除をしてあげないといけませんね。
マックにはお世話になっているのだから
冷却用のファンが回っているということは
埃を吸っているということだもんね。

1月14日

大きい原稿をバックに入れて
電車に乗っていたら
にこにこしたおじさんがやってきて
このバックの中身はなに?って聞いてくるので
「絵」です、と答えたら、
高い絵なの?って聞き返してきて
いや、大したもンじゃないですと、再び答えたら
うーん、売れる絵を描かなきゃねー、と言われてしまいました。
ごもっとも

なんだか知らないけれど
僕は
よく外で見ず知らずの人に話しかけられることが多い。

1月15日

朝起きて外をみたらびっくり 
大雪だー
白い布で梱包されたような・・

今年の東京は雪が多くてまるで雪国のようです。
たまたま雪景色のイラストを描いていたので
リアルタイムな雰囲気が嬉しい。

せっかくデュアルプロセッサーになったので
3Dソフトを立ち上げてカモノハシを立体で作りました。
そのうちキャラをいっぱい作って
HPで発表したいと思ってます。

1月16日

二度目の大雪ともなると
街で見かける雪だるまの数は激減する。
たぶん、雪だるまは年に一度作れば気が済むのだろうね。
ほとんど見あたらなかった。

1月17日

今日は頭がぼけぼけで
餃子を作ろうと思って食材を買いそろえてきたのに
肝心の餃子の皮を買い忘れてしまった(なぜ!)
しょうがないので
急遽つくね鍋に予定を変更して
さあ食べようという瞬間
炊飯器のスイッチを入れ忘れていて
ご飯が炊けていない・・(あれま)

1月20日

親戚の女の子よりメールあり
キングクリムゾン再び来日!
会場は赤坂ブリッツ日にちは4/9,10
エー整理券配らないの?
チケット発売日は1月31日8時30分より
ウドー音楽事務所のチケット販売所にて・・
ということは手に入れるためには
徹夜覚悟!
もう若くないからそんな根性ないなー
でも観たいなー

1月21日

今日は正月しか帰らない実家にちょっと用事があって
帰りました。(実は結構近所)
用事は午前中にすべて片づいて
久々に正月料理以外の母親の手料理をいただいて
「あーこれは懐かしい味だ」なんて・・
・・全然思いませんでした。
うちの母親はとにかく進歩的な人なので
料理はドンドン進化していきます。
僕が子供の頃食べたお袋の味なんてものは
もうすでに存在しないし、きっと本人も再現できないでしょう。
絵描きがもう昔の絵に立ち戻れないのと似ています。
似ててどうする!
とってもおいしかったけれど
ほんとはあんなおしゃれなスパゲッティより
ケチャップどろどろのスパゲッティが食べたかったのさ!

そうそう
今日は後藤の誕生日
いったいいくつになったのやら・・

クリムゾンのチケットはweb上で予約ができました。
これで、徹夜で並ばなくてすんだので一安心。

野田知佑さんの「カヌー犬・ガク」の本を友人が送ってくれた
そうかガクも去年逝っちゃったのか
ガクの写真集持ってます。
動物はみんないい顔しているけれど
彼は特にいい顔をしていた。
(アナクロには負けるけどね。えへ)

1月23日

アプリケーションソフトの一つがどうしてもうまく動作しないので
サポートセンターに電話をしてみました。
普通サポートセンターなんてところに電話すると
技術系らしいクールな声のおっさんが応対してくれるのだけれど
なんと優しそうな声のおねーさんが電話にでてくれて
とっても幸せ。
「えーっと、なんだっけなー」とか心許ない台詞をはきながらも
分かりやすくちゃんと教えてくれて
ねーさん!ちょっと惚れましたぜ・・

1月24日

友人からカモノハシのコースターをいただきました。(オーストラリア製)
嬉しいです。

カモノハシは絶滅危機動物ですけど
結構生命力の強い生き物らしいので
環境さえ整えば
ドンドン増えていくんだそうです。

1月25日

友人よりスッポンのスープをいただきました。
絶倫です。

1月26日

ピーマンが高いぞ、おい!
冬は野菜が高いです。
スーパーでくらくらしてます。
石油をがんがん焚いてビニール栽培しているわけですから
当然といえば当然ですけど・・
ようするに野菜って石油製品ですもんね。

久しぶりに
インク壺をぶちまけて
机の上が真っ黒になってしまいました。
幸い原稿への被害は軽度ですみましたけれど
やれやれ
最近ちょっと間抜けなことが続きます。

1月27日

バックドロップが特許だとは知りませんでした・・(笑)

なんか昨日から鼻がつんつんするなあと思っていたら
つんつんがだんだん喉の方まで下がってきて
イガイガな感じに変わり
そうかこれは風邪か、とやっと気が付く。
風邪だと認識した瞬間に
頭が痛くなり体がだるくなるのは
「風邪」という言霊の中にも風邪の「観念菌」がはいっているからだ。
むやみに風邪だと認識してはいけない。
風邪という言葉を認識しないですむにはどうすればいいか。
風邪という単語をノートに2000回書いてみるといい。
先日、自分の名前を2000回サインしているうちに
「加藤洋之」というものが次第に意味を失い
なんだかわからないものになっていく経験をした。
(元々たいした意味もないので恐縮だが・・)
それを「風邪」に応用するわけだ。
1500回をすぎてからだんだん頭がクリアーになってきて
1800回に到達する頃には
喉のイガイガはほとんど消える。
でも、ここで安心して途中でやめてはいけない。
1800回でやめると風邪は必ずぶり返す。

くだらないこと書いてないで早く寝ます。
おやすみなさい・・

1月29日

風邪でダウン
一日寝て暮らす。
夜中に目を覚まして、ぼーっとしていたら
波の音が聞こえる。
え、ここに海なんかないのに・・
夢かな?と思っていたら
実は、夜中の目黒通りを時折通り過ぎる車のエンジン音が
ドップラー効果とビルとビルの谷間に音がこだまして
波の音のように聞こえるらしい。
一台一台通り過ぎる車のタイミングが
頭の中で思い描いている波のザザーっというタイミングと
シンクロすると
ほんとに海辺にいるようでとても気持ちがいい。
ちょっとゴージャス・・

1月30日

二日ほど寝て暮らしたら
風邪もだいぶ良くなって、復活してまいりました。
なんか身も心も軽くなって気分すっきり
たまに風邪をひくというのは
ストレス解消にいいのかもしれません。
すべては陰陽のバランスですから・・
精神的にも肉体的にもある程度の病気になるということは
大事なことなのかもしれません。
変に薬を飲んでも病気の進行を遅らせるだけなので
一気に病気になって
一気に復活するという戦略が功を奏したようです。
でも仕事が忙しかったりすると
だましだまし薬を飲んだりして
自由に病気になる時間もないところが辛いところですね。

 


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