かものはし日記

2006年6月号


6月1日

今月、あらゆる業界は年末進行、お盆進行ならぬ
ワールドカップ進行です
すべては、ワールドカップを中心にスケジュールが組まれているはずです
サッカーなんかに何の興味もない
数十パーセントの人々にはとても迷惑な話なのでしょうけれど
それは
仕方のないことなのです

サッカー・アニミズム
お祭りです
宗派を問わず全世界の神様がサッカー選手の体を借りて
美しい舞を踊ります
ピッチ(競技場)は
中心(サッカーボール)が激しく動くマンダラなのです

ううっ、楽しみ

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サーベルタイガー

6月2日

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aquas da amazonia/uakti

塩ビでできたオルガンのようなものとか
草履でパーカッションを叩いたりとか
創作打楽器を操るブラジルの演奏集団uakti
(別に貧乏だから自分で楽器を作っているわけではないです 念のため)
彼らに惚れた現代音楽の巨匠フィリップ・グラス先生が
彼らのために曲を提供し演奏されたアルバムです

創作楽器とは思えない透明感
アマゾンとは思えない清涼感

6月3日

「アヴァンギャルドなお昼ご飯」

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アーリオオーリオベースの
ゴーヤとトマトのパスタはなかなかアヴァンギャルドな味でありました(笑)
作る前からダメだと思っていましたが
ゴーヤの苦みと
トマトの甘みと
唐辛子の辛さが
口の中でばらばらになる感じ
うーむ・・
音楽や絵などアートに関する限りでは
アヴァンギャルドでなくては意味がない、とまで思っているけれど
食べ物は普通で良いです

6月4日

今現在の自分の状況は、自分の望んだ結果である、
とはよく聞く話ではあるし
そのとおりだとは思うけれど
そうは言っても
いくつか望んでいない状況も少なからずあり
自分が本当は何を望んでいるのかなんて
実はまったくわかっていないのかも

自分の中にある虚無と絶望へのベクトル

これらと和合すればいいのか
戦えばいいのか
受け入れればいいのか
バランスを取ればいいのか

すべては、言葉にすぎないのか

とくに気にしなくて良いのか(笑)
どれだ?

ちょいワルとかちょいモテとか
くだらんキーワードを掲げる某雑誌愛読者オヤジとは一線を画する
こびないオヤジ達のフリージャズ

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sonore/no one ever works alone
ken vandermark    sax
mats gustarsson   sax
peter brotzmann   sax

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Guitar Oblique  live at knitting factory
david torn   guitar
vernon raid guitar
elliot sharp  guitar

6月5日

疎外感から来る憎悪
誰かが憎くてしょうがない
誰かを殺したい
そう言う気持ちを
「そう言うことは、誰だってあるよ、普通〜」
って、笑って言ってあげる人がそばにいるということが
大事なんだと思う

誤解を恐れずに言えば
今世間で起きていることは
決して異常なことではない
普通のこと
自分の頭の中で起きていること

6月6日

正義も道徳も
特になにか役に立つわけではない
(まあ、あるシステムを維持することには役に立つかもしれないけれど)
ユーモアだけが
人の心の中の矛盾を包摂できる

にこっと笑って
ちょこっとくだらないことを言えるひと
僕はそういう人になりたい

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john zorn/moonchild

john zornの新プロジェクト
またまた拷問天国、SMサーカス
世間の迷惑になるので、ヘッドフォンで聴きましょう(笑)
彼のこの手の音楽は
憎悪に対する
彼独特の音楽的なユーモアなのかもしれません

6月7日

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latitude/longitude

人間であることの恐怖と
人間であることの喜びとの
均衡を
どこらへんで保つか、ということを
いつも考えながら絵を描いています

6月8日

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都市というところはいつも工事中
工作機械の低周波が聞こえない日はないのです
先日うちの目の前で
下水道工事が始まり
日々爆音の中で暮らしております
低周波に毎日さらされていると
体調も悪くなるし、頭も回らなくなります
こういうときは
工事のノイズに合う音楽を聴くしかないのです
幸いその手の音楽はいっぱい持ってるし(笑)

ノイズにはノイズを

 

6月9日

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流線型体質

 

何をして良いのかわけがわからなくなり
筆がぴたりと止まってしまって
困っていたら
いきなり
キッチンの排水溝も詰まってしまい
途方に暮れる
これってシンクロニシティ?

排水溝の詰まりの原因が何となくわかったのだけれど
どうすればいいかわからず
しばし放って置いたら
ぱっと頭の中で解決方法がひらめき、実行
排水溝はスムーズに水が流れるようになったのだけれど
絵の方は煮詰まったまま
これはシンクロしないな〜(泣)

 

始まりました
人間力大会!
だらだらとつまらないオープニングセレモニーにいらいらしたあと
ようやくドイツ、コスタリカ戦
ドイツが2点目を入れた後、安心して寝てしまいました

6月10日
 

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青い空だけでできた星を想う

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john greaves/songs

いくつかの内的葛藤が、優しさに変換され
音として鳥のように空中で羽ばたいているのが見えるよう
大人のポップ・ミュージック
超超傑作!

6月11日

今日は珍しく出かけっぱなしの一日

お昼
パスタをつるつるやりながら打ち合わせ
午後は
ナレーションの仕事をされている北原久仁香さんが
宮沢賢治の朗読をされるというので
町田まで観に行きました
町田からバスに揺られて20分
宮沢賢治のお話に出てくるような佇まいの画廊喫茶

北原さんは朗読の中で歌も唄ったりして
とても素敵

いまさらながら
言葉を発すると言うことは、呼吸をすることなんだ
ということを思いました

夜は
かっこいいにーちゃんばかりのパントマイムパフォーマンス公演
同性愛がテーマ
ダンスとパントマイムが融合する様は
なかなか素敵だったのだけど
もうちょっと練習して足腰を鍛えた方がいいような気がします
動きの一つ一つに対して体の軸がぶれるのが気になりました
絵描きも
椅子に座って絵を描いていますが
足腰は大事なのです
足腰が弱ると
足腰の弱った絵になっちゃう

観劇の後
空手をやっている女性
ボクシングをやっている女性
飲むと乱暴になる女性
とお酒を飲みました
なんでみんな武闘派?(笑)

6月12日

後半34分小野投入というのは
なんか中途半端な気がしました
ポジションは下げ気味のボランチということでしたが
守りきるなら守る
攻めるなら攻める
はっきりさせるべきところははっきりさせる
テレビカメラでのほぼ真上からの映像は
ピッチをキャンバスにたとえると
なんか、メリハリのない絵だな〜、っていう印象

ま、でも
WBCも土俵際まで追い込まれての優勝だったし
クロアチアにさえ勝てば
ジーコをかわいそうに思うブラジルチームが
オーストラリア戦でたくさん点を入れてくれるので
得失点差で1次リーグ突破!とみました(笑)

6月15日

久しぶりの方と神楽坂でお食事
ほぼ10年ぶりです
以前よりパワーが増して立派になりましたね

6月16日

秋にできる青山のレストランの壁画を描かない?
というお仕事の打ち合わせ

そのあとはプロデューサーの方と
初台ドアーズで月の静止をテーマにしたライブを観ました
18年半に一度起きる月の静止という現象は
占星術的には
いろいろな奇跡が起こったり、願っていたことが叶う絶好の機会だそうです
月の静止は今がピーク
9月まで続くそうなので、願いを叶えたい人は今がチャンス

ライブは
月の女神達(女性ミュージシャン)を中心としたアヴァンギャルドありトラッドフォークありと
盛りだくさん
デミ・セミのエミ・エレオノーラさんを
久々に拝見できてうれしかったです
彼女のピアノ(アコーディオン)即興弾き語りはほんとにすてき
(ピアノを弾きながら、次に何を歌うか考えているところがかわいい)

6月17日

某新聞社文化部の次長さんの自宅(谷中)で月一の宴会(さんど会)に参加
参加者は
ノンフィクションライターの若者
テレビでナレーションの仕事をされている方
日本の現代詩の勉強をされている内モンゴルの留学生
とてもかわいい外モンゴルの女の子
中国関係の仕事をされている女性
常務取締役という肩書きのかっこいいおねーさん
童話を書く主婦
などなど
素敵な話
高尚な話から
うんこの話まで

中原中也の大ファンのモンゴルの留学生と恋愛の話をして
(彼はモンゴル語で詩をかくロマンチックな人)
意見が一致し握手を交わしました(笑)
握手をするとね
その人のパワーがわかります
日本人が失ってしまった生命力が伝わってきて
ちょっと圧倒されてしまいました
繊細でとても優しくそして力強い

はじめて電気ブランというお酒を飲みました
うまいな〜、このお酒
ほんのり甘みがあって口当たりも良いし、すぐ酔える(40度)
モンゴルの留学生もとても気に入ったようです
電気ブランが飲める有名な「神谷バー」が近所にあるんだから
飲みに行ってみようかな

6月18日

日本、クロアチア戦
川口のPK阻止を観られただけで
十分満足
観ていてなぜか入れられる気がしなかった
彼の人間力の勝利です

泣きました

6月19日

僕はなぜか熊本出身の方と縁が深いのです
お会いしたことはありませんが
何度か挿絵を描かせて頂いている
小説家の梶尾真治さんも熊本の方です
ということで
宣伝です

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梶尾真治さんの単行本の表紙を書きました
タイムトラベルラブロマンスの中短編集です
ちなみに
お兄さんが乗っている自転車のようなものは
自転車型航時機(タイムマシン)ですが
小説には出てきません
僕がイメージで描いたものです
念のため

梶尾さんは、今SFマガジンでも連載されていて
(怨警星域)
その挿絵も描かせて頂いております

6月20日

ブラジル戦は
5バックで中田のワントップっていうのはどう?
狩猟民族ではない日本には
フォワードという存在は必要ない気がします
独自のシステムのサッカーを創造してほしい
農耕民族型サッカー

結局
独自性というものがなければ
世界では戦えないと言うことがわかりました
平均点ではだめということ
日本という民族、感情、システムとは何なのか
そして個人ということ
個性という
突き詰めていくのが一番つらくて困難なことを
やらなくちゃいけない
と、感じました

ま、しかし
サッカーというのは不思議なスポーツです
人は手を使うことで進化してきたのに
手を使ってはいけないスポーツがあるなんて
この世界では
手はまさに忌むべき存在
過ち(ファウル)を犯すためにだけ存在する
有史以前から手は知性の象徴として君臨してきたのに
サッカーには
人は知性を育みつつも
決して知性に取り込まれてはいけない
決して野生を失ってはいけないという
メッセージが込められているのかも(大げさ)

ということで
万が一大ラッキーでブラジルに勝って
一次予選を突破しても
おれはちっともうれしくないさ
ということ
(いや、密かにうれしい(笑)

6月21日

ネットニュースによると
ついにジーコにダメだしされた柳沢
フォワードのくせに
周りがよく見えすぎて
自分のやるべきことを見失う
優しくて繊細な柳沢
クロアチア戦で決定的な場面をはずしたときには、思わず
バカ〜
と、叫んだけれど
やっぱり僕は柳沢が大好きなのさ
彼は自分に足りないものが何かを知っていて
それを克服するために
フォワードというまったく向いていない場所を選択したのかもしれません

今は針のむしろにすわる思いでしょう

今日は絵を描いていると
曇天の彼方にいる柳沢のことばかり
頭によぎります

6月22日

ブラジルに2−0で勝たなくてはいけない日本
ブラジルに2−0で勝てるチームが
この銀河系に存在するのか?

なにやら
白色彗星帝国に挑む宇宙戦艦ヤマトのような
気分ではあるが
(反物質であるテレサもいないし)
ギカントを素手で破壊した未来少年コナンの例もある
すでにSFですらある明日早朝の日本、ブラジル戦
平行宇宙論が成り立つならば
ブラジルに勝つ日本が
この宇宙のどこかの次元に存在するはずである

それは、この次元なのか?!

6月23日

実は寝てしまった日本ブラジル戦
たまだ〜
という隣の住人の絶叫で目が覚め
そうか玉田が点を入れたのね、えらいぞ、玉田
と思いつつまた寝てしまう

この世界にはラッキーも偶然もない
すべては必然の世界
運も実力のうち、というが
実力がなければ運はつかめない
意思の力のみが流れを変える
我々が住むこの次元はなかなか過酷な次元なのだ
これから
いろいろな意見が出てくるでしょう
何を選択して前に進んでいくのでしょう
不安でもあり
楽しみでもあります

繊細で神経質で落ち込みやすい国民性のまま
世界に通用する個性的なサッカーのシステムというものを
創造できると信じています

柳沢には優しく接してあげて欲しい
別に犯罪者じゃないんだから
柳沢に辛く当たっても
日本のサッカーは強くならないしね

しかしだ
あの決定的場面で変な蹴り方をさせてしまう
柳沢の守護霊は
いったいどういうつもりなのであろうか
そんなにも過酷な試練を与えなくても良いんじゃないの?
何か意味があるのでしょうか
是非柳沢はオーラの泉に出演して
江原さんに聞いてほしいものです(笑)

6月24日

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scorch trio/scorch trio

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luggumt/scorch trio

フィンランド出身のアヴァンギャルド系ギタリスト
ラウル・ビューケンヘイムがリーダーのギタートリオ
ものすごく凶暴で、とても美しい
ハイテンション・アバンギャルドジャズ
一瞬も気が抜けません
サッカーのようなジャズ
北欧の透明でアグレッシブな生命力

6月25日

ワールドカップはついに決勝トーナメント
一次予選の慣らし運転も終えて強豪国は全開モード
魂と魂のぶつかり合いです
美しいパス回し
華麗なボールさばき
観ていると音楽を聴いているように癒されます(笑)

イングランド・エクアドル戦
ディフェンスがすばらしいエクアドルを応援していたのですが
ベッカムの精度も堪能しました

イングランドのフォワード、ルーニーの強引さも楽しい
エクアドルのディフェンダーが
二人がかりで、まるで自動ドアが締まるように止めようとするところを
ルーニーが締まったドアをこじ開けるように
強引に突破するシーンには笑ってしまった

彼の顔ってまるで犯罪者(失礼)

こういう性格の人って
日本ではなかなか生きにくいでしょ
フォワードが育ちにくいお国柄

ま、でも
それが悪いというわけじゃないし
ドイツのフォワードのクラウゼみたいに
地味で華がないのにぼこぼこ点を入れる人もいるし
オシムが何を考えているか
楽しみです

そして
準々決勝は
ドイツ・アルゼンチン戦
これは好カードですね〜
楽しみだ

6月26日

椅子を新調しました
今まで使っていた椅子が
金属疲労のせいか
座った瞬間にパーツがばらばらと脱落して
ロッキンク機構とか座面高調節ができなくなってしまったのです

どうせ買うなら
座面がメッシュのかっこいい椅子がいいかな
(アーロン・チェアとか)
と思ったのですが
結局僕は
どんな高級な椅子に座ろうとも
座面であぐらをかかないと絵が描けない体質なので
座面が大きく平たい
低反発クッションの椅子を選びました

椅子選びは大事です
商売道具ですから
(といいつつ、ネット通販で見た目で購入(笑)

6月27日

孤独の守護神

猫は孤独を否定しない
ひとりぼっちでもいいんだよ
無理に心を開いて自分をわかってもらわなくても大丈夫

と言う

犬は孤独を癒してくれるだけだけれど
猫は孤独を肯定してくれる

この世に猫がいなくなったら
人は孤独と対峙する勇気を失うかもしれない

6月28日

他国のサッカー代表監督をやるということ
他国のナショナリズムを一手に引き受けるという孤独とは
どんなものなのだろう
オシム語録と言われている彼のこれからの発言が
とても楽しみであるし
学ぶことも多いような気がします

サッカーは
ある国にとっては希望であるし
ある国はサッカーさえ強ければいいと思っているし
ある国はプライドの発現の場でもある
日本にとっては
サッカーは「鏡」の様な気がします
システムと個人
変革
勇気
品格
案外この辺から日本は変わっていくのかもしれない

6月29日

ここ数日
ワールドカップは休養日
つまらんな〜

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ノルウェーの即興ジャズ・エレクトロニカ?
ジャンル分けが難しいとても先駆的な音楽です
編成は
エレクトロニクカな音を背景にギター、ドラムス、キーボード、ヴォイス、トランペットの即興演奏
supersilent
(超静寂というバンド名がすばらしい)
全部で7枚
最初の3作が3枚組
5枚目と7枚目がライブ
(7はDVD版もあります)
基本的にはスタジオで延々と繰り広げられた即興演奏を
編集してアルバムにしているようです
最近は
北欧のアヴァンギャルド・ジャズレーベル
rune grammofon , jazzland
を中心に攻略中
北欧というと
冷たく、透明なイメージですが
とても熱い音楽なのです

即興音楽と呼ばれるフリーミュージックがどうして好きなのかというと
いちばん人間くさいからです
システムを受け入れつつ
それに抗おうとするのが人ですから

6月30日

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equilibrium/matthew shipp

equilibriumとは、平衡とか心の平静という意味だそうです

静かな心で
危ういバランスの中を疾走する

こーゆうことがいったいいつできるようになるんでしょう(笑)
青が燃える美しいピアノ・ジャズ