かものはし日記2003年3月号


3月1日

「友人」に成り下がった女性と
共通の友人であるニューヨーク帰りのカップルと
4人で恵比寿で宴
台風娘と台風に対して備え万全な彼氏
二人ともいろいろあったようだけれど
2年前に会ったときよりずっとしっくりいってて
なかなか素敵になったじゃないか
彼の飼っていたニューヨーカー猫も
日本でみんなにとても大事にされて暮らしているらしい
人は会うたびに
関係性も距離感も少しずつ変化していく
愛と憎悪を乗せて

3月2日

強風
春一番でしょうか
風は大好きですが、春の風は好きではありません
花粉もあるし
なぜかまとわりつくし
こういう日はあまり外に出たくないですね
蕎麦屋も休みだし(笑)

3月3日

来月の4月7日は鉄腕アトムの誕生日
その日から
アール・ヴィバン主催で
50人のアーティストが描く手塚治虫の世界展を
全国の高島屋で展開するそうです
僕も後藤も参加しておりますので、是非ご覧ください
リトグラフも販売するそうです
僕は今日原稿を渡してきたのですが
後藤はまだみたい(うふ)

今日から本格的に花粉症
朝から鼻水だらだら
頭はボーっとするし、なぜか後ろ頭が熱い
僕の花粉症対策
1.服のあらゆるポケットにティッシュをいれて、いざ外出
2.担当編集者が花粉症じゃないとわざと納期を遅らす(うそ)
3.俺は花粉症なんかにならねーよ、と言ってたやつが
今年から発病したのを見て笑う
(後藤が早く発病しますように(笑)
4.テレビでは、いろいろな究極の花粉治療法が
究極のくせにいっぱいある
シジュウム茶
柿の葉茶
レモンバーム

ナツメ
あんまり聞いたことのないものばかり
人は100人いれば全員体質が違うのだ
誰にでも効くものなど存在しない
かくいう僕は
キオスクで売っている鼻トールメンソールという
100円のキャンディが一番効くのだ

3月4日

水彩紙を大量に買いに渋谷へ
なぜだか今日は強風にもかかわらず
花粉症の症状があまり出ない
不思議
どこか悪いのだろうか(笑)

満員ではないけれどそれなりに人がいっぱいいる電車の中で
電車がゆれるたびに
ぼくの肩につかまる若者がいて
最終的には
ゆれなくてもぼくの肩に手をおいてじっとしているのです
そういう状況でぼくはどうしていいかわからず
まあ、つかまっていたいのならば
しょうがない
という気持ちになっていたのでした(笑)
(振り払うわけにもいかないしね
変な子)

3月5日

破壊と再生は同時に起こる
創造と破壊もきっと同時に起こるのでしょう
資本主義という「創造」には
やはり戦争とか環境破壊などの
「破壊」が必要なのでしょうか
人は何かを生み出したいという欲望を持った生き物です
逆にそれを失ってしまったら人ではなくなるわけです
何かを生み出そうとするとき
それによって破壊されるものがなんであるか
というところまで考慮に入れてこそ
「創造」なんだと思います
もっと繊細な想像力を

3月6日

明日が締め切りだと思っていたら
今日でした
びっくり
良かった、早めにやっておいて

春一番が吹いてから
ちょっと寒い日が続きますね
春一番といえば
キャンディーズ(歳がばれるね)
子供のころ友人に無理やりコンサートに連れて行かれて
(俺は子供のころからプログレファンなのに)
コンサート会場で友人が
ランちゃん死なないでー、と叫ぶ姿を見て
(何で死ぬんだよ)
ものすごく嫌な気持ちになったのを覚えています(笑)

3月7日

メル・ギブスン主演の「サイン」をビデオで観る
唐突で、とっちらかった話で
ちっとも面白くなかったのだけれど
現実感とはこういうものなのかもしれない
よくできた映画や小説は
整合性の取れた、きっちりとしたストーリー展開で
僕らを魅了してくれるけれど
現実というのは
実は、不条理だし、唐突だし、意味もない
よくできた小説より現実の方がリアルではないのだ
ただ
僕らが、現実の中で
伏線を
予兆(サイン)を
見つけられるだけの感受性を備えていないだけなのかもしれないけれど
もしくは
それが鈍っているか

3月8日

秋葉原へ
大型量販店には見向きもせず
路地裏の怪しいショップめぐり
日本語で話をしていなかったり
どう見ても非合法なものがずらりと並んでいるお店が大好き
土曜日は露店も多い
アジアンな雰囲気がいいね
小学生の男の子とお母さんが
二人で一生懸命電子工作キットを選んでいるほほえましい光景も
僕も子供のころはよく父親に秋葉原に連れて行ってもらいましたし
中学生のころステレオアンプを自作していて
電源回路の配線をしくじり
トランスから煙が出して壊してしまって、しくしく泣いていたら
(だって一個3000円もするんだもん、
子供のお小遣いでは貯金をしないと買えない値段)
母親が3000円出資をしてくれたりね
いい思い出です
がんばれ未来の天才エンジニア
同じ少年時代なのに僕の場合はなぜか
イラストレーターになってしまったけど(笑)

3月9日

今日は24歳の女の子とデート
(デート年齢差記録更新(笑)
2年ぶりくらいに会って
ずいぶん大人っぽくなって、バーバリーのスカートが似合う
素敵な女性になりました
繊細でやさしくて
おひつじ座らしい凛としたところは
彼女の文章とそっくり
カフェでお茶を飲んで
そしてイタリアン
24歳
これからいろいろあるよね
モノ書きなんだから
フラットな平穏な人生より
起伏に富んだ人生を望む(笑)
どんなひどい経験もネタにできるのがモノ書きという仕事の素敵なところ

3月10日

うちのマンションは1フロアーに2世帯しかない
細長いマンションなので
あまり隣の部屋の音などが気にならないのでは、と思って借りたのだけれど
構造上意外と響くみたい
隣の住人は
僕の調査によると(笑)
看護婦さんらしいのだが
彼氏と住んでいるらしく、夜勤明けにえっちをしている声がよく聞こえる
ま、それはどこに住んでいても聞こえるし
いまさらそんな声を聞いたからといって興奮する歳でもないし(笑)
いいんだけど
僕に聞かれないように
声を出すのをこらえているらしく
ものすごく変な声なのが気持ち悪い(笑)
指輪物語に出てくる怪物のような声なんだもん

3月11日

用事があって実家へ
母親とすし屋で昼ごはん
大好きなさば寿司がイメージと違う味
品が良すぎるのもなんかなー
生臭い感じがないんだよね
俺は回転すし屋のさばが好きなんだなー

3月12日

最近の毎日の楽しみ
「さよなら小津先生」の再放送
毎度のことながら君塚脚本の時代性と繊細さに関心する
最近の毎週の楽しみ
阿部ちゃんファンとしてはうれしい「最後の弁護人」
なかなか出来のいいドラマ
小津先生で生徒をやっていた俳優の森山未来くんが
傷害致死容疑の犯人で出演
久々に観たけれど
ずいぶん大きくなってしまって
この世のものとは思えないような
立っているだけで切ないような雰囲気が少しなくなってしまったな
ま、しょうがないけど

3月13日

昨日長時間自転車に乗っていたせいか
花粉をたくさん吸ったらしく
鼻水鼻詰まりばかりでなく喉まで痛い
花粉がつらくなると
頭までおかしくなる
右の鼻の穴から垂れた鼻水を指で左の穴に押し込めるとか
わけのわからないことをし始めてしまうのさ(笑)

3月14日

どこかの家のポストに
小さなプレゼントを入れている男の子を目撃
多分ホワイト・ディというやつですね
友人たちに冷やかされながら
でも友人と一緒じゃないと勇気がなくてプレゼントを届けられない
初々しくていいね
俺はすっかりすれちゃって
ずいぶん遠くまできてしまったよ(笑)

鼻炎で気が付かなかったのだが
風邪を引いたようです
今年はもう2度目
ちょっとよれよれ
確定申告の計算をふらふらの頭でやる
領収書を整理していると
去年一年間どう生活していたかが良くわかる
6月のワールドカップの頃なんか
ほとんど家にいたらしく
何も買ってないもん(笑)
(画材を買っていないということは、仕事もしていなかったということかな)

3月15日

風邪を引いて気持ちが後ろ向きな時は
デヴィッド・シルヴィアンを聞いて
さらに後ろ向きに
一回転して前向きになるという理屈(笑)
図書館で見つけたので
借りてきてしまった
dead bee`s on a cake/devid sylvian
タイトルも暗いし
曲も暗いし
声も陰気
手元には置いておきたくない音楽だが
嫌いじゃない
というか好きかも(笑)
人には嫌いだとは言うけれど
実はJapanの頃から聞いてたりして
陰気な声だけれど
独特な声だしね
曲のセンスもいい
エスニックなリズムもいい
うっとうしいけど魅力的

3月16日

「さみしさが止まらない」友人が
遊びにくる
池澤夏樹の「言葉の流星群」と
村上春樹の「海辺のカフカ」がおみやげ

3月17日

冷たい雨の中
確定申告書を出しに上野の不忍池をとぼとぼと歩く
バードウオッチングをしている老夫婦
夫はカメラを持ってはしゃいでいるが
傘を持ってその夫を追いかけている妻はつまらなそうだ

渋谷へ打ち合わせ
アトムのリトグラフの色校が出てきた
なかなかきれいに上がっていて一安心

またまた用事で新橋で母親と中華
会うたびに
母親とはひどい冗談を言い合う
母親に
あんたは変わっているとか
小さいときからいやなことばっかりするとか
今度生まれ変わっても
あたしの子供に生まれないでね、と言われたので
やだな、継母はいじわるで
僕のほんとうのおかあさんはどこにいるんだろう
と切り返す(笑)

3月18日

念願のロード・トゥ・パーディションを
DVDを借りてきて観る
感情がそのまま映像になったような細やかな演出
美しく斬新な映像
見事な役者陣
(好きじゃなかったトム・ハンクスもなかなかよかった)
でも
欲を言えば何かが足りない
というか、逆に
ピースがぴったりとはまりすぎている
何かひとつ
ピースをはずしてほしかった
前作アメリカン・ビューティのように

3月19日

もう一度ロード・トゥ・パーディションを観る
子供であるということは
すべてを知っていて
知らない振りをするということ
大人であるというのは
歳を重ねるたびに何も判らなくなっていくということ

3月20日

駅の改札付近で
バイオリンのケースを持った長身の白人を見かける
大きな旅行バックも引きずっていたので
多分クラシック系のストリートミュージシャンかな、と思って見ていたら
彼は
改札で前の人にぴたっとくっつき
自動改札の機械を通る瞬間に自分の着ていたジャケットをぱっと開いて
前にいる人と自分とを機械に一人と認識させて
何食わぬ顔ですり抜けていく
その身のこなしとタイミングのよさとしたたかさに
うっとり(笑)
さすが音楽家
彼はクラシックではないな、ジャズだな
とか思ったりして

アメリカという国は
戦争をして
数年後
その行為を映画で反省する
そして映画で反省すると
すっかり禊が済んだと思い込み
また新しい戦争をはじめる
彼らにとって
戦争は映画と同じ「文化」なんだね

3月21日

ズボンのボタンが取れたので
ソウイングセットを買ってくる
手先を使うことは何をやらせてもうまいなーと思いながら
鼻歌まじりでボタン付けをしていたら
ボタンを逆につけていたことに気付く

3月22日

仕事がちっともうまくいかないので
金城武主演の「リターナー」をビデオで観る
思っていたよりもずっと出来がいい
キャラクターの描写が細やかだし、とてもかわいい
脚本もしっかりしていて、いい感じに切ない
主役の女の子もかわいいし
岸谷五郎の切れた悪役ぶりもいい
きっちりとしたジュブナイルSFに仕上がっている
金城武がパスタを作るシーンがなかなか素敵
いい男が料理をするシーンって
なんだかかっこいいね
(アクションシーンよりかっこいい)
ということで
今日は夕食はパスタ(笑)

3月23日

このくらいの歳になると
友人知人が結構いろいろすごいことを経験していて
(特に恋愛ネタ、女の子同士は集まるとそういう話をして盛り上がるそうですが)
そういう話を聞いていると
大変だなあ
とか
悲惨だなあ、すごいなあ、びっくりだあ
という感情の前に
いいネタ持っているなあと感心するのです(笑)
ちょっとうらやましかったりして
人生はいろいろあったほうが楽しいのです
人に悲惨だけど笑える自分の話を出来ない人生なんてつまらない
俺も負けないよ(笑)

占星術的に言うと
3月21日が新年ということになるらしいです
星座はおひつじ座ではじまりうお座で終わります
だから
このあたりに生まれたおひつじ座は
一番原初的な星座
喧嘩っ早いのね
この星座の女性が身近に4人ほどいますけど
(やけに多い)
一見のほほんとしてそうだけど
内面の激しさがチラッと垣間見れるところが魅力的
老成したみずかめ座の僕にしてみれば
ずいぶんエネルギッシュに見えるのです
春に生まれた人はパワフルだよね
キングクリムゾンの絶頂期のメンバーは
4人中3人がおうし座だし

3月24日

昨日あたりから
すっかり春らしい気候になって
少し暑いくらい
というのも
この仕事場は朝から夕方までずーっと日が入るので
ほとんど温室状態
ぼーっとしちゃって頭が重い
夏はエアコンがちゃんと効くかどうかちょっと心配
蕎麦屋「角萬」も込み具合が増した
暖かいと冷たいお蕎麦を食べたくなるんだろうね
春だねえ
くすんだブルーの麻のジャケットが欲しいねえ

3月25日

春の雨
ずいぶん暖かい
もう重いコートを着なくてすむので気分は軽いね
八百屋で、真っ赤なトマトを見つけたので
今日も夕食はトマトのパスタ
台所でビールを飲んで、たらの芽の胡麻和えをつまみながら
パスタをゆでる
その間にトマトの皮をむいてパスタソースを作る
ビールを飲みながら料理をする
至福の時間だね
そろそろまめご飯も作れそうだ
たらの芽
菜の花
ふきのとう
春は食材がいろいろで楽しい
てんぷらだろうな、やっぱり
(たらの芽の胡麻和えはいまいちだったのさ)

3月26日

突然暖かくなりすぎたせいか
春のせいか
花粉のせいか
どうも頭が重くて集中力に欠ける日々
仕事の出来具合は悪くはないけど、進みが悪い
ぼーっとするのね
だけど
毎日食べている角萬の蕎麦の微妙な出来具合は良くわかる
毎日食べていると
蕎麦は毎日違うということに気が付く
ここの蕎麦は
一部は機械で打っているのかもしれないけれど
基本的には手打ちでしょう
毎日打ち具合、茹で具合が微妙に違う
今日はとてもいい具合でした
そんなことが判るまで食うなっていう感じだけどね(笑)

ジャック・ディジョネット/スペシャル・エディションを聞く
ドラマーは結構ピアノもうまい人が多い
伝説のドラマー、ミルフォード・グレイブスもうまかった
まさしくピアノは打楽器であるという証明なんだね
すばらしいというよりすごい演奏
ぼーっとした頭にはちょうどいい

3月27日

男は基本的に単体では世界を愛する能力がないのです
男は女性を通してしか世界を愛することができない
たとえそれが片思いでも
気になる人がいるのなら
世界を愛することが出来る
この女が生きている世界なら愛するしかないじゃないか
っていう感じ
女性を愛せない男は世界を破壊しようとします
電磁波ミサイル(空飛ぶ電子レンジ)とか作るなよ
そんな暇があるのなら
戦争なんかしていないで
好きな女を見つけてくれよ

3月28日

日本vsウルグアイ
勝敗はさておき
日本はまったりと強くなりましたね
ウルグアイクラスだと
経験不足はあるもののほぼ互角な感じ
試合勘のもどらない川口が
自信なさげな表情でゴールを守っていたのがせつなかった

3月29日

近所の韓国家庭料理のお店で夕食
ここは日本人の口にあわせていない
本場の韓国家庭料理
メニューも半分韓国語だし
お客さんも韓国人が多い
ハングルが飛び交うアジアンな雰囲気が素敵
本場の韓国料理は激うま
これくってりゃ、サッカー強いよ
レッドデビルの赤は、キムチの赤だね
カプサイシンパワー
が、しかし
浅草生まれのおっさんにつかまり
ひとしきり浅草ロック座のおねえさんがいかに美しいかという話と
吉原の話を聞かされる
やれやれ

昨日のプロ野球開幕戦
今年の中日の外野陣は鉄壁だね
阪神と同様優勝候補だね、と思いながら
サッカーと野球をちょくちょく切り替えて見ていたのだが
今日
夕食から帰ってきたら
中日がぼろ負けしていた
いい試合をしないと、日本のプロ野球は廃れちゃうよ
混戦希望!

3月30日

ボブ・ザップ、テレビに出すぎだよね
本業を大切に

3月31日

「戦場のピアニスト」を観る
前半の残虐シーンは席を立ちたくなるくらい酷いし
(事実なんだからしかたがないが)
主人公の実在のピアニストは
これからガス室送りになる家族を置いて、仲間を見捨てて
いろいろな人たちの世話になってただ逃げ回るだけ
ピアノが上手でよかった
芸は身を助けるね
(ドイツの将校に救われる)
彼の体験した事実だけが正直につづられている
何も語っていないし、なにも伝えようとはしていない
台風か、なにかの天災のように描かれる戦争
市井の人々にしてみれば
戦争は本当にそういうものなのでしょう
ただただ圧倒的な力に翻弄されるだけ
呆けて逃げまわるしかない
主人公が地下組織に入って英雄的行為をしたり
彼の音楽が人々を救ったり
そういう感動的なシーンがほとんどないのが
この映画の感動的なところなのかもね
2度と観たくない映画
そういう意味では
戦争映画として、すばらしいのかも


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